タイの光と陰⑥

どのくらい待っただろうか。
仲間のトゥクトゥクが、スペアタイヤを持って
駆けつけてくれた。
一緒にタイヤ交換を手伝った。
『ごめんな・・・』
彼は、申し訳なさそうにそう言った。
「マイペンライ」(気にしないで)
僕は、笑顔でそう答えた。
荷物は、仲間のトゥクトゥクに載せ替えて、
再出発することになった。

300バーツの約束だった運賃は、
目的地に着けなかったので、
「100バーツ」と言われたけど、
僕は40バーツの気持ちをプラスして
彼に手渡した。
またも彼は、気まずそうに笑い、
それを受け取った。
中華街で散々乗車拒否される中で、
彼が、手を差し伸べてくれたことは、
とても嬉しかった。
目的地には着けなかったけど、
彼がいなかったら、
僕はまだ、中華街で
待ちぼうけしていたかもしれない。
こんなハプニングに遭っても、
僕は感謝の気持ちでいっぱいだった。
再出発したトゥクトゥクの中で、
もし、これがインドだったら・・・・・
と僕は空想していた。
インドだったら、こう言われるだろう。
『パンクしたのは、この荷物のせいだ。
500バーツ払え。』と。
それを聞いた僕は、頭にきて、
「馬鹿言ってんじゃねーよ。
パンクしたのは荷物のせいじゃねーよ。
しかも、目的地に着いてねーんだから、
50バーツしか払わねーよ。ボケ!」
こんなやり取りになるだろうな・・・・と一人笑った。
トゥクトゥクの兄ちゃんの笑顔は、
最高だった。

僕は、この広いバンコクで、
再びこの兄ちゃんのトゥクトゥクに、
乗る偶然に出逢う気がしてならなかった。
そして、僕はあの時のお礼を
もう一度言いたいと思う。
「あなたに会えてよかった」と。
(つづく)

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