ぼくは何を期待して、ここに行ったんだろう?
ここでの体験に何を望んでいたのだろう?
みんなここでの体験を「楽しかった」と言っていたけど・・・
ぼくは、楽しくなかった。
苦しかった。。。
ダイアログ・イン・ザ・ダーク
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きっとみんなが、その暗闇を楽しめたのは、
これが終われば、間違いなく「光」がまた見えるから。
そう分かっていたからだと思う。
目を開けていても、閉じていても、何の景色も変わらない、
何も見えない暗黒の空間に、突如として放り出されていたならば、
誰もがきっとパニックに陥ったはずだ。
何も見えない暗黒の世界で、ぼくの動きは止まった。
一歩踏み出すことさえ大きな冒険が待っていた。
視覚以外の感覚が一斉に動き始めた。
冷たい風が、腕の上を通り過ぎていく。
遠くで水が流ている音が聞こえる。
落ち葉の匂いが、足元から漂ってくる。
靴の下には、その落ち葉を踏みしめている感覚がある。
それらを目で確かめたいが、それはできない。
その欲求は満たせない。
そのじれったさのためか息が苦しくなる。
足元が悪くても、それを確認しながら歩むことはできない。
目の前に障害物があっても、当たる前に止まることなどできない。
そんな時、
「みなさん、こっちですよ」
道先案内人である視覚障碍者である彼の声が聞こえた。
彼は、昼間であっても暗闇であっても、光が見えない。
その彼の声が、とても頼もしかった。
暗闇の中で無力なぼくらには、彼の存在は、想像以上にデカかった。
視覚以外の感覚が、研ぎ澄まされていく過程は、
それはそれで心地よいものであったが、
この世界に留まりたいとは一度も思わなかった。
暗闇の中で、
想像していた以上にできないことがあることに恐れも感じた。
目の見えない人は、
どうやってご飯を食べているんだろう?
どうやってトイレをするんだろう?
彼の明るい声が、ぼくらを救った。
ぼくには、少々の偏見があるのだと思う。
たくましく生きるその彼の姿に、心から敬意の思いを感じた。
楽しいことなど、初めから期待していなかった気がする。
苦しかったけど、色々なことを考えていた。
想像もしていなかったようなことを色々と考えていた。
たぶんそれだけで、行った価値があったんだと思う。
ぼくはまたここに行くと思う。
普段感じもしない何かを感じるために。
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