目以外の何かで、モノを見たことがありますか?

ぼくは何を期待して、ここに行ったんだろう?

ここでの体験に何を望んでいたのだろう?

 

みんなここでの体験を「楽しかった」と言っていたけど・・・

 

 

ぼくは、楽しくなかった。

苦しかった。。。

 

ダイアログ1

ダイアログ・イン・ザ・ダーク

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きっとみんなが、その暗闇を楽しめたのは、

これが終われば、間違いなく「光」がまた見えるから。

そう分かっていたからだと思う。

 

目を開けていても、閉じていても、何の景色も変わらない、

何も見えない暗黒の空間に、突如として放り出されていたならば、

誰もがきっとパニックに陥ったはずだ。

 

何も見えない暗黒の世界で、ぼくの動きは止まった。

一歩踏み出すことさえ大きな冒険が待っていた。

 

視覚以外の感覚が一斉に動き始めた。

冷たい風が、腕の上を通り過ぎていく。

遠くで水が流ている音が聞こえる。

落ち葉の匂いが、足元から漂ってくる。

靴の下には、その落ち葉を踏みしめている感覚がある。

 

それらを目で確かめたいが、それはできない。

その欲求は満たせない。

そのじれったさのためか息が苦しくなる。

 

足元が悪くても、それを確認しながら歩むことはできない。

目の前に障害物があっても、当たる前に止まることなどできない。

 

 

そんな時、

「みなさん、こっちですよ」

道先案内人である視覚障碍者である彼の声が聞こえた。

 

彼は、昼間であっても暗闇であっても、光が見えない。

その彼の声が、とても頼もしかった。

暗闇の中で無力なぼくらには、彼の存在は、想像以上にデカかった。

 

 

視覚以外の感覚が、研ぎ澄まされていく過程は、

それはそれで心地よいものであったが、

この世界に留まりたいとは一度も思わなかった。

 

暗闇の中で、

想像していた以上にできないことがあることに恐れも感じた。

 

目の見えない人は、

どうやってご飯を食べているんだろう?

どうやってトイレをするんだろう?

 

彼の明るい声が、ぼくらを救った。

 

ぼくには、少々の偏見があるのだと思う。

たくましく生きるその彼の姿に、心から敬意の思いを感じた。

 

 

楽しいことなど、初めから期待していなかった気がする。

苦しかったけど、色々なことを考えていた。

想像もしていなかったようなことを色々と考えていた。

 

たぶんそれだけで、行った価値があったんだと思う。

 

 

ぼくはまたここに行くと思う。

普段感じもしない何かを感じるために。

 

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