世界一の記憶

僕は、タイ・マッサージに出逢い、
タイのマッサージ屋さんを
手当たりしだい片っ端から渡り歩いてきた。
8年間の間に、200店は回ったと思われる。
しかし近年(ここ4~5年)、
バンコクのお店の形態が変わってきた。
高級ホテルの中にあるスパのように、
高級感溢れるオシャレな内装で、
スパよりも格安で、
従来のお店よりチョッピリ高めの値段設定
のお店が増え始め、
お客さん(観光客)は、そちらに流れ始めた。
僕も初めの頃は、勉強、勉強の毎日だったので、
安いお店ばかりを渡り歩いていたけど、
最近は、オシャレな店しか行かなくなっていた。
しかし、今回ツアーで連れて行った人たちに、
「ここの近くに、僕の通い詰めていたお店があるんですよ。
キレイなお店ではないけど、はずれた記憶がないほど、みんな上手いんですよね~。
ず~っと行ってないけど、僕の先生は、その店にたくさんいたんですよ。」
と話したら、そこに行きたい!と盛り上がった。
久しぶりに、その店に行くことにした。
すると、意外に暇そうだった。
周りに増え続けているオシャレなお店に、
お客さんが流れているんだろうな、と思った。
マッサージが始まった。
”さすがに、ここは上手いよな~。”
一瞬で、僕はお任せモードになった。
そして、
お店の臭い、その空気感、聞こえてくるわずかな騒音・・・・・・
僕はタイムスリップして、あの頃の記憶が蘇ってきた。
うわ~~~やっぱりいいわ・・・ここは。
懐かしいな~。何もかも昔のままだ。
そうだ。
この狭い部屋の中で、僕はたくさんのことを学んだんだ。
わ~癒される~。
一人至福の世界に埋没していた。
そして受けながら、僕はこんなことを考えていた。
”小さい頃に特別な時だけに、
連れて行ってもらったファミリーレストラン。
そこで食べたハンバーグ。
あの味、あのソースは、この年になっても世界一の味。
いくら今、高級レストランで出されたハンバーグでも、
あの時の味には、かなわない。
それと同じだわ、これは。
僕は、この空気の中で育ったんだ。
この空気に育てられたんだ。”
わ~・・・・・・・・・・・癒される・・・・。
何もかも昔のままだった。。。。。
そして、2時間のマッサージが終わり、
体を起こした時だった。
セラピストが、突然
「あっ!?」と言った。
「あなた、よだれ・・・・」
見ると、直径5cmくらいのよだれが、シーツに付いていた。
『やっべ~~~』(苦笑い)
ずっと起きてたはずなんだけど・・・。
やっちゃったよ。。。(爆)
「あなた、罰金1,000バーツね!(約3,000円)」
僕は、笑うしかなかったが、
その突っ込みも僕のツボにはまった。(爆)うまい!
何もかもが昔のままだった。
”良かった~、ここに戻って来て。”
僕は、心身ともにホントに癒された。
そして、お見送りしてくれる出口のところで、
僕を担当してくれた彼女は言った。
「あなた、1,000バーツ忘れてるわよ。」
そして、笑った。
僕の大好きな空気は健在だった。
僕は、またここに来るだろう、と感じた。
その時、その彼女はまた僕に言うのだろう。
「1,000バーツのあなた、また来たの?」と。
そんな人々に、僕は育てられ、今がある。
このお店は、僕の記憶の中では、
世界一のマッサージ店として君臨するのだろう。
時代は流れていく。
しかし、超えることの出来ない懐かしい思い出は、
記憶の中で、そのまま輝き続けるのだろう。
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